耳鼻咽喉科 / 手術診療について / アレルギー性鼻炎

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アレルギー性鼻炎は、ハウスダストやスギ花粉などのアレルゲンに鼻粘膜が反応して、鼻みず、鼻づまり、くしゃみといった症状がおこるアレルギー性疾患です。

  

 

検査

①鼻汁好酸球検査

鼻汁を採取してその中に好酸球という血球成分が含まれているかを確認する検査です。鼻汁に好酸球が含まれていると、アレルギー性鼻炎の可能性が高くなります。

②特異的IgE検査

血液を採取して、血中のIgE抗体を測定する検査です。スギ花粉やハウスダストなど、何に対してアレルギーがあるかが分かります。

③CT

アレルギー性鼻炎にかかると、鼻腔の粘膜は腫れます。CTでは、鼻腔の粘膜の腫れを確認することができます。

アレルギー性鼻炎

④電子スコープによる鼻腔の視診

鼻腔の粘膜が腫れているのを確認します。とくに鼻腔の下鼻甲介という部分が腫れることが多いです。

 

治療

治療には、抗原の除去や回避、薬物治療、アレルゲン免疫療法、手術療法があります。

①抗原の除去や回避

どのようにして、鼻の中にアレルゲンを入れないようにするか指導します。また、鼻の中を生理食塩水で洗う方法についても指導しています。

②薬物療法

抗ヒスタミン薬、抗ロイコトリエン薬、ステロイド点鼻薬などを処方します。

③アレルゲン免疫療法

アレルギー体質そのものを改善する治療です。通院期間は3年以上必要ですが、7~8割の患者さんに効果がある治療法です。
当科では、ハウスダストの主成分であるダニと、スギ花粉で舌下免疫療法を行っています。

④手術治療

アレルギー性鼻炎の外科的治療は、薬物療法では症状の十分な改善を得ることができない重症例におこなっています。しかし、外科的治療は症状を長期間抑えられるため薬物治療に比べ対費用効果が高く、海外のガイドラインでも推奨されています。
また、内視鏡の使用によって以前より負担が少なく、確実に行えるようになっています。当科では、選択的後鼻神経切断術をおもに行っています。

 

選択的後鼻神経切断術

難治性アレルギー性鼻炎に対する新しい手術

アレルギー性鼻炎の手術といえば、鼻の粘膜をレーザーで焼く治療が有名です。しかし、鼻の粘膜を操作する手術は、再発率が高いことが課題でした。そこで最近は、内視鏡を使って、鼻の粘膜の下を走っている神経を切断して、鼻汁を減らす手術が行われています。
その最新術式が、当院で行っている「選択的後鼻神経切断術」です。この手術は、鼻腔にある下鼻甲介の粘膜の下を走行する神経だけを切断します。 これまで、下鼻甲介を操作する手術は、下鼻甲介の粘膜下にある骨とその周囲の組織を、目視で取り除くという方法でした。しかし、内視鏡を用いて、きれいに下鼻甲介の粘膜を剥離できるようになると、粘膜下を走行している神経血管束を確認できるようになりました。
われわれが行っている選択的後鼻神経切断術では、粘膜を傷つけず、この神経血管束を切断しています。加えて、鼻づまりを改善するため、下鼻甲介の骨もいっしょに取り除きます。この手術は、神経を処理するため、鼻汁の分泌を抑える効果が持続します。また、鼻腔が広がり続けるため、鼻づまりも解消できます。
これまでも、後鼻神経を切断する術式(後鼻神経切断術、翼突管神経切断術)はありましたが、鼻腔すべての範囲で神経を切断するため、鼻の機能を弱くしすぎる点が懸念されていました。
当院では、後鼻神経の切除範囲を下鼻甲介に限定した選択的後鼻神経切断術をこれまで、300例以上行ってきました。手術は、内視鏡を鼻の中に挿入して行うので、術後、顔が腫れることはありません。この手術は、選択的に下鼻甲介のみの神経を切断するため、その他の鼻腔の粘膜から鼻汁が分泌されます。鼻汁がなくなってしまうと、鼻の乾燥が過度に起こり、別の後遺症が出現する可能性があるため、ある程度、鼻汁が出るように、あえて下鼻甲介のみの処理に限定しているのです。
術後、鼻づまり・鼻みずとも90%以上の方が改善しています。術後の治療は、薬なしが1/3、点鼻薬のみ1/3、内服薬と点鼻薬1/3程度となっており、症状が手術によって完全になくなるわけではありませんが、症状の大幅な軽減を見込めます。
鼻が乾きすぎる、のどに違和感があらわれる症例は数%程度で、合併症がおこりにくいという特徴があります。
下鼻甲介の腫張が再度起こった症例はいままではありませんが、比較的新しい手術であるため(当院では10年程度)、今後起こる可能性はあります。鼻の症状がありましたら、当院を受診していただくようにしています。

 

帰室時

全身麻酔の場合、帰室後は、ベッド上安静で、血中酸素濃度や心電図などのモニターを装着しています。最初は眠気がありますが徐々に回復してきます。術後3時間でベッド上安静は解除になり、これらのモニターもとりはずします。
局所麻酔の場合、帰室後1時間のベッド上安静です。
手術直後はあまり出ませんが、2時間ほど経つと血液が混じった分泌物が喉の奥へ流れてきます。そのような分泌物は飲み込まず、口からそっと吐き出してください。
出血を減らすために、サージセルという時間がたてば自然と溶ける材料を挿入します。サージセルを鼻の中に入れても、鼻への圧迫はほとんどないため、鼻の痛みはほとんどありません。

 

手術後の経過

手術によって、顔が腫れることはありません。しかし、鼻の粘膜が一時的に腫れたり、鼻の中に血がたまったりするため、鼻づまり、鼻みずなどの症状がおこることもあります。それらの症状は少しずつ改善します。
術後は、アレルゲンを洗浄するため、ポンプを用いて、食塩水での鼻腔内の洗浄を行っていただくことがあります。その場合は、入院中にその方法をお伝えいたします。

 

退院後の注意点

①退院当日からのお仕事への復帰も可能です。
②術後2週間は、出血を防ぐため、飲酒、喫煙、激しい運動、強く鼻をかむことは控えていただいています。
③手術により、一時的に粘膜の腫れや血が付着するため、鼻づまりは術後1~2週間程度続きます。
④術後は、最初の2回の診察は、週に1回程度診察し、以後は、一か月後以降に診察します。当院では、手術を受けられた方の診察をできるかぎり優先しますので、予約時間に診察することがほぼ可能です。

 

入院期間

快方の度合いによって入院期間がかわりますが、全身麻酔の手術で2泊3日または3泊4日、局所麻酔の手術は1泊2日(当日入院の場合)が標準的な入院期間です。

 

手術

手術は全身または局所麻酔で行います。
手術にかかる時間は全身麻酔の場合、麻酔の導入・覚醒を含めて約2時間で、局所麻酔の場合は1時間です。状況により短縮延長します。

 

術式

下甲介が肥大している場合、下甲介骨を粘膜下に剥離し切除します。蝶口蓋孔から下鼻甲介内部を走行する神経組織を含む神経血管束を見つけて、切除します。

 

おこりうる合併症

1. 術中・術後の鼻出血

粘膜の切開を行うため、切開部より出血する可能性があります。

2. 痛み、発熱など

症状に応じて薬などで対応します。痛みは個人差があり、術後も継続する可能性があります。
※鼻の内のみしか操作しませんので、顔が腫れることはありません。

上記手術の予測される結果

その後は鼻腔にだんだんと痂皮がたまって鼻がつまる感じがありますが、術後2~3週間ぐらいですっきりします。

  

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