消化器外科 / 虫垂炎について
虫垂炎とは
虫垂は、腸の始まりの部分にある盲腸から細長く突き出た3~6cmほどの器官です。この虫垂に何らかの原因で炎症が起きる病気が虫垂炎です。
症状について
初期は、みぞおち周辺に鈍い痛みが多くみられます。吐き気や嘔吐を伴うことがあり、炎症が進むと右下腹部に痛みが移ります。歩いて振動が下腹部に伝わると、響くような痛みも出ます。進行すると、虫垂が破れて内部にたまっていた膿が腹部全体に広がることがあります。診断が遅れると腹膜炎などの合併症を起こし、重篤な状態に陥ることもあります。問診、身体診察、血液検査、超音波検査、CTを用いて複合的に診断します。
高齢者は若年者と比べて痛みに対する感度が低く、気付いた時には重篤化していることがあります。話ができない乳幼児も発見が遅れがちなうえ、虫垂の壁が薄く穴が開きやすいので注意が必要です。
治療について
炎症が軽ければ、手術をせずに抗菌薬を点滴もしくは内服する内科的治療を選ぶこともあります。安静を保つために食事を控える必要があり、入院が基本となります。軽症の場合は3日程度で改善し、その翌日から社会復帰できます。しかし、症状が治まっても再発するリスクはあり、退院後の再発率は30%程度とされています。
抗菌薬の効果が十分ではなかったり、穴が開いている場合(開く可能性があると判断した場合)は手術による治療を行います。炎症が進むと手術難度があがり、合併症を起こす可能性も高くなるため、基本的には発症(お腹の症状が現れてから)より早期に手術介入することが望ましいとされています。虫垂の付け根を切ることで切除しますが、付け根のところに炎症がある場合は、糸による結紮が難しいため、自動縫合器を用いて一部の盲腸を含めて切除する場合もあります。
当院では急性虫垂炎に対して、基本的には腹腔鏡での手術を行っています。へそと左下腹部に数個の穴を開け、カメラや専用の器具を挿入し、虫垂を切り取ります。炎症の程度にもよりますが,術後数日で退院できることが可能です。
また、抗菌薬と鎮痛剤で炎症を抑えた後、手術するという選択もできます。炎症が治まっている、もしくは軽度であればさらに傷口を減らした単孔式手術も実施できます。