消化器内科 / 超音波内視鏡検査(EUS)

当院における超音波内視鏡検査(EUS)の現状と展望

 消化器内科は消化管領域や肝胆膵領域など様々な臓器の診療に携わっており、その中で内視鏡を用いた診療は消化器内科の大きな特徴の一つとなります。今回は、超音波内視鏡に焦点を当て、当院における超音波内視鏡検査(EUS)の現状と展望について説明したいと思います。

超音波内視鏡(EUS)について

 超音波内視鏡(EUS: endoscopic ultrasonography)とは、内視鏡先端に搭載された高周波プローブを使用することにより、空間分解能に優れた観察を可能にした検査で、上部消化管内視鏡検査(いわゆる胃カメラ)と同様に口から挿入します。EUSの先端を胃壁や十二指腸壁にあてて観察することで、消化管や膵臓、肝臓、胆道系、腹腔内リンパ節などを詳細に観察できることから、CTやMRI等で病気が見つかった際、精査を行うことが主な役割となります。通常、外来で検査を行うことができ、検査時間は約30分です。当院では、EUSの検査の際に鎮静剤を使用しておりますので、検査当日は乗り物の運転ができないことが注意点となります。また、EUSを用いて超音波内視鏡下穿刺吸引法(EUS-FNA)を行うことで、病変の組織診断も可能であることが特徴の一つとなります。EUS-FNAを行う際は、入院をしていただき検査を実施しています。

当院におけるEUSの現状 ~特徴~

 当院では、2019年4月にコンベックス型のEUS(GF TYPE UCT260)を導入しました。それ以降、膵腫瘍の精査を中心にEUSを使用する頻度は年々増加しています。症例の経験を積むことで、全ての消化器内科医師がスクリーニングのEUS検査を行うことができるようになっています。検査は術者一人で行うのではなく、介助者と看護スタッフの協力のもと、チーム医療で実施しています。専攻医が術者で施行する場合は、必ず上級医が介助者となり、安全面や医療の質に関しても注意を払っています。さらにCOVID-19感染症の流行からは、より感染症対策を徹底し検査に取り組んでいます。また、他の検査予定との兼ね合いにはなりますが、平日であれば曜日に関わらず検査を行うことができ、迅速な検査を可能としていることも当院の大きな特徴と言えます。これらの結果、診断精度の向上と治療計画の最適化が可能となっています。

EUS件数

当院におけるEUSの現状 ~他診療科との連携~

 今日の医療では、EUSは特に膵がん診療において重要な役割を果たしています。EUSは、「膵がん診療ガイドライン2022」で、CTやMRI(MRCP)と同等の精密検査の位置付けとなっており、微小病変の検出に有用とされています。このことからEUSは膵臓の精査や消化器臓器の精査を行う検査である印象が強いかもしれません。しかし、EUSは消化器臓器だけを対象にしているわけではありません。縦隔腫瘍や副腎など組織採取が難しい腫瘍に対しても、EUSでの精査が可能となっているのです。当院はたくさんの診療科で構成されておりますので、原発・転移を問わず、肺がん、悪性リンパ腫、乳がんといった様々な診療科に関わるがんに対しても、精査を行うことができます。

当院におけるEUSの現状

当院におけるEUSの展望

 EUSは診断ツールとしての有用性を確立し、全国で普及しています。近年EUSを用いた技術革新は目覚ましく、EUS ガイド下に消化管内から消化管近傍の対象物を穿刺して治療するドレナージ術にも応用されており、ますますEUSの重要性が高まっています。そのため、当院でもドレナージ治療にEUSを応用を検討しています。具体的には、①超音波内視鏡下経消化管的ドレナージ(EUS-TD: endoscopic ultrasound-guided transluminal drainage)と② 超音波内視鏡下胆道ドレナージ(EUS-BD: endoscopic ultrasound-guided biliary drainage)と呼ばれる治療法です。ここで、それぞれに関して概説します。

当院におけるEUSの展望

①超音波内視鏡下経消化管的ドレナージ(EUS-TD: endoscopic ultrasound-guided transluminal drainage)

 EUSを用いて、消化管から液体貯留をドレナージする手法であり、特に膵炎後の局所合併症に対する有効性が報告されています。膵炎を発症すると、膵炎に伴い膵周囲に液体貯留を来すことがあり、同部への感染例や有症状例では治療が必要となる場合があります。その際、低侵襲な治療から開始し、反応性をみながら必要に応じて侵襲度の高い治療に移行する「step-up approach」という方法が、標準的な治療法となります。腹腔内への穿破リスクを考慮し、被包化が形成される4 週間以降を目安として、保存的な治療効果が乏しい場合にEUS-TDを行います。EUS-TDでも治療が難渋する場合、step-upとして、ネクロセクトミーや外科的介入が検討されます。

EUS-TDの実際

②超音波内視鏡下胆道ドレナージ(EUS-BD: endoscopic ultrasound-guided biliary drainage)

 「EUS-BD」はEUS-FNAの技術を用いて、胆汁の流れが悪くなった胆管に対してステントを経消化管的に留置する治療のことで、消化管閉塞や術後再建腸管などの影響で、内視鏡的逆行性膵胆管造影(ERCP)によるドレナージ治療ができない場合に検討されます。胆管への穿刺経路によって治療の名称が異なり、胃から穿刺する場合は「EUS-HGS (hepaticogastrostomy)」、十二指腸球部から穿刺する場合は「EUS-CDS (choledochoduodenostomy)」と呼ばれます。EUS-BDは広く普及し出しているものの、重篤な合併症の報告もあり、安全性・容易性の向上が求められています。

 以上、当院における超音波内視鏡検査(EUS)の現状と展望について説明させていただきました。今後もEUSを診断ツールおよび治療ツールとして有効に活用できるように研鑽を積んでいきます。該当される患者さんがいらっしゃいましたら、当院消化器内科にご紹介していただけましたら幸いです。

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