脳神経内科 / パーキンソン病・パーキンソン症候群

動きにくさ、手足のふるえ、歩きにくさなどの原因を詳しく調べ、薬物治療、リハビリテーション、デバイス治療を組み合わせて診療します。診断から病状が進んだ時期まで、生活状況に合わせて継続的に支援します。

パーキンソン病とは

パーキンソン病は、脳内で運動の調整に関わるドパミンが不足することで、動作が遅くなる、筋肉がこわばる、手足がふるえる、姿勢を保ちにくいなどの症状が現れる病気です。便秘、睡眠の問題、立ちくらみ、気分の落ち込み、においの感じにくさなど、運動以外の症状を伴うこともあります。

なぜ脳神経内科での診療が大切なのか

パーキンソン病は、同じ「動きにくさ」でも、薬の効き目が切れるウェアリングオフ、体が勝手に動くジスキネジア、起立性低血圧、睡眠障害など原因が異なり、病期ごとに治療戦略が変わります。診断だけでなく、運動症状・非運動症状・生活機能を継続して評価できる脳神経内科での診療が重要です。

米国のパーキンソン病患者13万8,728人を対象とした大規模観察研究では、神経内科医の診療を受けた患者は、プライマリ・ケアのみの患者と比べて調整後の死亡リスクが22%低く(ハザード比0.78)、大腿骨近位部骨折や施設入所も少ない結果でした。観察研究のため因果関係を断定するものではありませんが、専門的な診断、薬剤調整、転倒・嚥下障害などの合併症対策を継続する意義を示しています。

パーキンソン症候群とは

パーキンソン病に似た動きにくさや歩行障害を示す病気を、まとめてパーキンソン症候群と呼びます。多系統萎縮症、進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核症候群、薬剤性・血管性パーキンソニズムなどが含まれます。経過や治療への反応が異なるため、正確な診断が重要です。

主な症状

  • 動作が遅い、着替えや食事に時間がかかる
  • 歩幅が小さい、最初の一歩が出にくい、方向転換で足が止まる
  • 安静時に手足がふるえる、筋肉がこわばる
  • 転びやすい、姿勢が前かがみになる
  • 薬の効く時間が短くなる、体が勝手に動く
  • 便秘、睡眠障害、立ちくらみ、排尿症状、気分や認知機能の変化

診断と検査

症状の始まり方と経過、服用中の薬、日常生活で困っていることを伺い、動作、筋肉の緊張、歩き方、眼球運動、姿勢反射などを診察します。必要に応じて血液検査、頭部MRI、核医学検査などを組み合わせ、パーキンソン病とパーキンソン症候群を見分けます。

治療

薬物治療

治療の中心は、脳内で不足するドパミンを補うレボドパ製剤です。年齢、仕事や生活、認知機能、合併症に応じて、ドパミンアゴニスト、MAO-B阻害薬、COMT阻害薬などを組み合わせ、動きやすさと副作用のバランスを調整します。

進行期には、薬が効く時間が短くなるウェアリングオフ、効き始めが遅いdelayed-on、薬を飲んでも効かないno-on、薬が効いている時間に体が勝手に動くジスキネジアなどの運動合併症が現れます。服薬時刻・回数・1回量の見直し、作用時間の異なる薬の追加を行い、内服調整だけでは生活上の支障が残る場合は持続投与や脳深部刺激療法などのデバイス治療を検討します。

便秘、起立性低血圧、排尿障害、日中の眠気、レム睡眠行動障害、抑うつ・不安、幻視、認知機能低下などの非運動症状も生活の質を大きく左右します。原因となる薬の見直しや症状ごとの治療を行い、必要に応じて院内各科や地域の医療・介護職と連携します。

非薬物療法(リハビリテーション・生活調整)

薬物治療と並行して、理学療法による歩行・バランス・筋力・持久力訓練、作業療法による日常生活動作や住環境の調整、言語聴覚療法による声・構音・嚥下訓練を行います。定期的な運動、転倒予防、食事・栄養管理、福祉用具の選択まで含め、生活機能を保つことを目指します。

デバイス治療

内服薬を細かく調整しても、薬が効かない時間や体の勝手な動きが生活の妨げになる場合には、機器を用いて薬を持続的に届ける治療や手術療法を検討します。

当院では、薬を皮下から24時間持続的に投与する治療(ヴィアレブ®)に対応しています。脳深部刺激療法(DBS)など当院で実施していない治療が適している場合は、神戸市立医療センター中央市民病院、北野病院、大手前病院などの近隣医療機関と連携します。

当院の診療体制

外来での継続診療

症状の日内変動、転倒、飲み込み、睡眠、便秘、認知機能などを確認し、薬とリハビリテーションを調整します。ご家族や介護職から得られる生活上の情報も治療に役立ちます。

薬剤調整・リハビリテーションを目的とした入院

Hoehn & Yahr(ホーン・ヤール)重症度3~4程度の患者さんを主な対象として、薬剤調整とリハビリテーションを目的としたパス入院を開始します。外来だけでは把握しにくい症状の日内変動、転倒、嚥下、睡眠、便秘、血圧変動などを入院中に集中的に評価します。

参考にしているのは、ドイツで広く行われているParkinson’s Disease Multimodal Complex Treatment(PD-MCT:パーキンソン病多職種複合治療)の考え方です。脳神経内科医が薬剤を調整しながら、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、看護師、薬剤師、管理栄養士、医療ソーシャルワーカーなどが集中的に介入します。

PD-MCTに関する海外研究では、運動症状、日常生活動作(ADL)、歩行・バランス、非運動症状、パーキンソン病に特化した生活の質(疾患特異的QOL)の改善が報告されています。当院でも、退院後の生活を見据えて、薬、運動、食事・栄養、住環境、介護サービスを一体として見直すことを目指します。効果には個人差があり、対象や入院期間は病状に応じて判断します。

通院が難しくなった場合の地域連携

病状が進み通院が難しくなった場合も、かかりつけ医、訪問診療、訪問看護、訪問リハビリテーション、ケアマネジャーなどと連携します。患者さんとご家族が住み慣れた場所で療養を続けられるよう、治療内容や注意点を共有します。

受診を希望される方へ

当科外来は完全予約制です。現在当院に通院していない方は、まずかかりつけ医にご相談いただき、紹介状をご準備のうえ、医療機関から地域医療連携室を通じて予約をお取りください。

当院の他科に通院中の方は、現在の担当医にご相談ください。必要に応じて院内で脳神経内科の受診を調整します。