脳神経内科 / てんかん

てんかんは、脳の神経細胞に一時的な電気活動の乱れが起こり、発作を繰り返す病気です。けいれんだけでなく、反応がなくなる、記憶が抜ける、動作が止まるなど、発作の現れ方はさまざまです。発作を抑えることに加え、仕事、学業、運転、妊娠・出産など、一人ひとりの生活を見据えて診療します。

緊急時のご案内

このような発作は救急受診を

発作が5分以上続く、短時間に繰り返して意識が戻らない、呼吸が戻らない、初めてのけいれん、けがを伴う場合は、予約外来を待たず119番へ連絡してください。

てんかんは珍しい病気ではありません

世界では約5,000万人がてんかんとともに生活しており、最も多い神経疾患の一つです。世界保健機関(WHO)は、適切に診断し抗てんかん発作薬を使用することで、最大約70%の患者さんが発作のない状態を目指せるとしています。

一度けいれんしただけで、必ずてんかんと診断されるわけではありません。発熱、脳卒中、低血糖、失神、薬の影響などによる一時的な発作と、繰り返すてんかん発作を区別する必要があります。

けいれんだけが発作ではありません

  • 全身が硬くなり、手足が大きくけいれんする
  • 数秒から数分、呼びかけへの反応がなくなる
  • 会話や動作が突然止まり、口をもぐもぐさせる
  • 発作の前後の記憶が抜ける
  • 手足や顔の一部だけが勝手に動く、しびれる
  • 突然、これまでにないにおい、既視感、強い不安や恐怖感を感じる
  • 睡眠中に体が硬直する、舌をかむ、目覚めたときに筋肉痛や頭痛がある

発作の症状は脳のどこから電気活動の乱れが始まるかによって異なります。焦点発作、全般発作などの発作型を見分けることが、適切な薬を選ぶ第一歩です。

診断と検査

発作の始まり方、続いた時間、発作中の反応、発作後にどのくらいで普段の状態へ戻ったかを詳しく伺います。目撃したご家族の説明や、安全に撮影されたスマートフォン動画は診断の重要な手がかりになります。

脳波検査で発作に関係する電気活動を調べ、MRIで脳腫瘍、脳卒中後の変化、海馬硬化など、発作の原因となる病変を確認します。血液検査、心電図などを組み合わせ、失神、低血糖、睡眠中の異常運動、心因性非てんかん発作なども鑑別します。

発作と発作の間に行う通常脳波では異常が現れないこともあり、脳波が正常でもてんかんを完全には否定できません。必要に応じて睡眠を含む脳波や、専門施設での長時間ビデオ脳波モニタリングを検討します。

生活や就労を妨げる偏見を減らすために

てんかんは古くから誤解や偏見の対象となってきました。現在は、脳の電気活動によって起こる治療可能な病気であることが広く理解され、運転免許も診断名だけで一律に禁止される制度ではありません。

一方で、発作そのものだけでなく、病気を知られることへの不安、就職・就労上の制限、通院や薬の負担が生活の質に影響します。発作があるかないかだけでなく、仕事、学業、家庭生活で困っていることも診療の対象です。

治療

抗てんかん発作薬

治療の中心は抗てんかん発作薬です。焦点発作か全般発作か、年齢、腎臓・肝臓の機能、妊娠の可能性、気分や認知機能、併用薬、仕事への影響を考えて薬を選びます。発作が止まっていても自己判断で中止すると再発することがあるため、減量・中止は医師と相談して行います。

新しい抗てんかん発作薬も選択できます

レベチラセタム、ラコサミド、ペランパネルなど、従来薬と作用の仕組みや相互作用が異なる薬が増えています。薬の種類によって、服用回数、眠気・めまい、気分や行動への影響、心臓への注意点などが異なります。新しい薬がすべての患者さんに最適とは限らず、効果と副作用を確認しながら選びます。

当院では、シナプス小胞蛋白質2A(SV2A)に選択的に作用するブリーバラセタム(ブリィビアクト®)も導入しています。薬物相互作用が比較的少なく、内服薬と注射薬があるため、外来から入院・救急時まで治療を継続しやすい選択肢です。眠気、めまい、精神・行動面の変化などには注意します。

2種類の薬で発作が止まらない場合

発作型に合った2種類の抗てんかん発作薬を、十分な量と期間で使用しても発作が抑えられない場合は、薬剤抵抗性てんかんの可能性を考えます。診断と発作型を見直し、長時間ビデオ脳波、てんかん外科、迷走神経刺激療法などの専門的評価が必要な場合は、神戸大学医学部附属病院などのてんかん専門施設と連携します。

妊娠・出産を考えている方へ

抗てんかん発作薬には、妊娠中の安全性や避妊薬との相互作用が薬ごとに異なります。妊娠が分かってから急に薬を中止すると、発作によって母体と胎児が危険になることがあります。妊娠を希望する段階で、薬の種類と量、葉酸の服用について相談してください。

発作から身を守るために

発作が起きたときの対応

  • 発作が始まった時刻を確認し、続いた時間を測る
  • 周囲の硬い物や危険物を除き、頭を守る
  • 可能であれば体を横向きにし、呼吸を妨げない
  • 口の中に指、箸、タオルなどを入れない
  • 押さえつけたり、無理に水や薬を飲ませたりしない
  • 発作が長引く、繰り返す、呼吸が戻らない場合は119番へ連絡する

日常生活で注意すること

服薬忘れ、睡眠不足、過度の飲酒は発作を起こしやすくすることがあります。入浴、水泳、高所、火気、重機、単独作業などは、発作型と発作の状況に応じて安全対策を考えます。家族や職場と、発作時の対応を共有しておくことも大切です。

自動車運転

てんかんと診断されたことだけで、運転免許が一律に取得・継続できなくなるわけではありません。発作のない期間、発作が意識や運動に与える影響、睡眠中に限られるかなどを踏まえ、公安委員会が個別に判断します。発作が再発した場合や薬を変更・中止する場合は運転を控え、主治医と兵庫県警察の安全運転相談窓口へ相談してください。

医療費・生活の支援制度

てんかんで継続的な通院治療が必要な場合、自立支援医療(精神通院医療)の対象となり、外来医療費の自己負担が軽減されることがあります。所得、指定医療機関、申請手続きなどの条件があります。

発作の頻度や生活への影響によっては、精神障害者保健福祉手帳、障害年金、就労支援などを利用できる場合があります。制度の対象は一人ひとり異なるため、医療ソーシャルワーカーや自治体窓口と相談します。

てんかんがあっても、自分らしい人生を

当科が目指すのは、発作回数を減らすことだけではありません。てんかんがあっても、てんかんのない人と同じように学び、働き、家族や仲間と過ごし、希望する人生を選べるよう、治療と生活の両面から支援します。

受診を希望される方へ

当科外来は完全予約制です。現在当院に通院していない方は、まずかかりつけ医にご相談いただき、紹介状をご準備のうえ、医療機関から地域医療連携室を通じて予約をお取りください。

当院の他科に通院中の方は、現在の担当医にご相談ください。必要に応じて院内で脳神経内科の受診を調整します。