脳神経外科 / 代表的な疾患

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救急疾患

クモ膜下出血、脳出血、一部の脳梗塞、外傷性頭蓋内血腫などは救急対応いたします。
当科は神戸市二次救急輪番システムに組み込まれ、主に中央、灘、東灘を中心とした救急隊からの搬送を引き受けております。さらに地域医療連携システムにより、近隣病院・診療所からの救急患者の受入れも可能な範囲で行っております。

頭蓋内腫瘍

膠芽腫(図.1)や転移性脳腫瘍などの悪性頭蓋内腫瘍に対しては、直達手術や生検などの外科的治療に続いて、放射線照射、抗腫瘍剤内服治療といった標準的治療を行います。外科的治療も疾患の予後を考え、無理な摘出にこだわることなく、症例に応じて適宜定位的手術や内視鏡を用いた方法を取り入れ、QOLの維持を目指します。

図1 膠芽腫
図1 膠芽腫

髄膜腫(図.2)、神経鞘腫(図3)、脳下垂体腺腫などの良性腫瘍は外科的治療で最大限の摘出が出来るように治療計画を立てますが、重要な神経や血管の周囲の腫瘍は無理に摘出することなく、場合によっては術後に放射線手術(γナイフ)を行うこともあります。
なお、本年より当院でも放射線手術(Xナイフ)が稼働します。
また最近は一部の脳下垂体腺腫では薬物だけで治療できる場合もあります(図.4)。

図2 髄膜腫

 

図2 髄膜腫
図3 聴神経鞘腫

 

図3 聴神経鞘腫
図4 脳下垂体腺腫

 

図4 脳下垂体腺腫

未破裂脳動脈瘤

脳ドック、頭痛やめまいに対して施行したMRIで未破裂脳動脈瘤が見つかることは少なくありません。
最近では100人のうち2、3人にあると言われていますが。破裂してクモ膜下出血を起こすものは全体の0.5%から1%ですが、比較的大きいもの(最大径5〜7mm以上)、ふた瘤型のもの、頭の後の方にあるもの、多発性にあるものは破裂しやすいようです。

こうしたいろいろな条件を参考に、開頭クリッピング手術(図.5)、コイル塞栓術、MRIによる経過観察の3つのうちから、患者さんの年齢、生活活動度、治療に対する意欲等を考慮し、十分な話し合いをしたうえで方針を決定します。

図5 未破裂脳動脈瘤クリッピング

 

図5 未破裂脳動脈瘤クリッピング

脳梗塞

急にどちらかの手足が麻痺して動かなくなったり、言葉がしゃべれなくなった場合は脳梗塞か脳出血の可能性が高いです。
まずCTで出血がないと判断された場合は、MRIを撮り梗塞の範囲や程度、閉塞した血管の場所を診断します。もし発症から3時間以内の超急性期であればtPAという薬で血栓を溶かす治療を行います。(図.6
しかし詰まった血管の再開通が得られないと、脳の一部が機能停止に陥り、運動麻痺や言語障害などの症状が発現することになります。この機能停止に陥った部分は元に戻すことはできません。

図6 超急性期血栓溶解療法

 

図6 超急性期血栓溶解療法

従って脳梗塞の治療の基本は、

  • 1)進行を食い止めること
  • 2)周囲の眠った脳を元気にすること
  • 3)再発を予防すること

といえます。

1)の目的では点滴や様々な薬を用います。
2)の目的で行うのは薬に加えて主にリハビリテーションです。最近は発症後で切るだけ早期に開始します。
3)の目的では、アスピリンやワーファリンなどの抗血小板剤や抗凝固剤の内服は必須です。
それでも血管病変が高度で内服だけでは再発予防が不十分と思われる場合は、血管吻合術や、ステント留置(図.7)、頸動脈内膜剥離術などの外科的療法などを病態に応じて行うことがあります。

図7 頸部内頸動脈狭窄

 

図7 頸部内頸動脈狭窄

脳梗塞になる一歩手前の、一過性脳虚血発作という状態があります。これはいきなりどちらかの手足の脱力や言語障害がおこり、30分〜1時間続いた後自然に回復します。
高齢者で血圧が高く、糖尿病のある人でこういう症状があると、数日以内に脳梗塞を起こす危険が高いので、すぐに受診してMRIなどで血管病変の有無を検査しなければなりません。
一過性脳虚血発作のうちに正しく診断して治療を開始すると、脳梗塞に陥る前に予防できるのでとても大切なことと言えます。

脊椎脊髄疾患

高齢化社会が進むに連れて脊椎変性疾患の有病率は確実に増加します。
手足の堪え難いしびれ、痛み、歩行障害などの原因となる頸椎椎間板ヘルニア、頸椎症、頸椎後縦靭帯骨化症、頸椎脊柱管狭窄などは病変の性質、広がり、症状の程度に応じて、前方除圧固定術か椎弓形成術を行います。
一側の下肢の痛みやしびれは腰椎椎間板ヘルニアの可能性があり、10〜15分歩くと足が痺れて歩けなくなり、しばらく前屈みになって休むと歩けるようになる間歇性跛行という状態は腰部脊柱管狭窄症の特徴であり、ヘルニア摘出術や腰椎椎弓切除などで治療します。

片側顔面痙攣、三叉神経痛

片側顔面痙攣は一側の顔面がぴくぴく痙攣する病気で、初めは目の周り、ついで口の周り、ひどくなると頚の筋肉が痙攣します。
人前に出たり緊張すると増強します。三叉神経痛は一側の顔面の堪え難い痛みで、数秒の激しい電撃痛が繰り返し繰り返し起こります。洗面、歯磨き、食事、会話などで増強するといわれます。

この2つの病気は外来で診察するだけで診断できます。
脳外科では耳の後から侵入して、神経と血管を剥離し、顔面神経や三叉神経の減圧をする微小神経血管減圧術という手術を必要に応じて行います。他にも治療法はいくつかあるので年齢、原因疾患の有無、症状の程度、先行治療の有無に応じて十分な相談の後、治療法の決定を行います。

特発性正常圧水頭症

高齢の方に時々見られる病気で、すり足、小股歩行、開脚歩行などの歩行障害や、自発性・集中力の低下を主とする認知機能障害、それと尿失禁の3徴候が特徴的です。
アルツハイマー病やパーキンソン病として治療されている方の中にこの疾患が少なからず見られます。
MRIで選別した後、髄液を抜いて症状の改善が見られれば髄液シャント手術を行います。

その他の様々な病態

以上列記した疾患が当院脳神経外科で扱う主なものですが、実際に外来を訪れる患者さんのほとんどは慢性頭痛、めまい、ふらつきなどの症状でお困りの方たちです。
脳に異常のないことがほとんどですが、詳細な病歴を聴取した後、神経学的検査を行い、必要に応じて頭部CTや頭部・頸椎・腰椎MRIを施行し、原因を検索します。
原因がはっきりすればそれに対する薬物療法、外科的療法などを選択しますが、はっきりしない場合でも適切な生活指導に心掛けます。

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