泌尿器科 / 前立腺癌

泌尿器科TOPへ戻る

前立腺癌とは?

近年最も増加している悪性腫瘍で、近い将来、男性悪性腫瘍の第一位になると考えられています。
かなり進行するまで無症状で経過することが多いため、一昔前はほとんどが手遅れの状態で発見されていましたが、最近はPSA検診の普及により、早期に発見されるようになっています。

検診と前立腺生検

前立腺癌の一次検診は静脈採血(PSA検診)によります。
PSAとは前立腺から血液中に放出される蛋白で、前立腺癌ではその数値が高くなることが知られていますが、前立腺肥大症や前立腺炎などでも高値を示すことがありますので、それを鑑別することが二次検診の目的ということになります。

1999年1月から2005年6月までに当院で系統的前立腺生検を行なった1026例(平均年齢70.7±8.2歳)の結果を示します。
当院で採用しているPSA(タンデム)の基準値は4.0ng/ml以下です。PSA値別癌検出率は~3.0ng/mlで11.5%、 3.0~4.0ng/mlで20.0%、4.0~10.0ng/mlで26.4%、10.0ng/ml~で62.8%でした。
PSAは基準値であっても、比較的若い患者さん(50~60歳)の場合は癌が検出されることがありますので、数値が低くても定期的なPSA検査で持続的な上昇が認められる場合は二次検診が必要です。

当院での二次検診の内容を示します。

  • (1)経腹超音波検査、直腸診(外来)
  • (2)MRI(外来) 場合により入院までに予約で行います。
  • (3)前立腺生検(一泊二日の入院検査)

当院の治療方針

治療方法としては手術(ロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘除術)、放射線治療、ホルモン療法の3つが中心ですが、臨床病期(どれくらい病気が進行しているか)、Gleason score(悪性度)、PSA値などを参考にして決定されます。
それぞれ単独で行われることもありますが、併用されることもあります。もちろん、患者さんの年齢や合併症などにより治療の選択肢がある程度限定されることもあります。

具体的な事例

(1)64歳、合併症なし。
臨床病期T2a、Gleason score4+4=8、PSA=7.9ng/ml
この患者さんの場合は、前立腺全摘術により根治性が高まると考えられますので、手術がよいと思います。
放射線治療は第2選択と考えます。
(2)74歳、合併症なし。
臨床病期T3a、Gleason score4+3=7、PSA=22.3ng/ml
この患者さんの場合は局所でやや浸潤性に発育する癌で、潜在的な転移の可能性もあります。
まず、ホルモン療法を数カ月間行い、放射線療法(根治照射)を行うことをおすすめします。
(3)70歳、合併症なし。
臨床病期T3b、Gleason score3+4=7、PSA=80.5ng/ml、多発性の骨転移
この患者さんの場合は手術や放射線治療(根治照射)の適応はなく、ホルモン療法が選択されます。
骨転移の著しい痛みに対してはその部位に対する放射線治療が効果を発揮します。

ここでは一例を挙げましたが、100人の患者さんがいれば100通りの病状があります。
患者さんそれぞれに病状が異なりますので、その人に最も適切な治療方法を考えてゆくことが大切です。

当院の実績

2012年の主たる治療方法が手術であるものは36例、放射線療法13例でした。
患者さんそれぞれの状況に合わせて、最善の治療を行うことができたと考えています。

前立腺全摘後の尿禁制

前立腺癌に対する手術の第一の目的は腫瘍の根治性にあります。
しかし、術後の尿失禁(尿がもれること)は患者さんのQOLを著しく低下させます。海外および国内の過去の成績は必ずしも良好とは言えず、手術後12~24カ月後の尿禁制(尿が漏れない状態)はおよそ65~95%で、施設間に著しい格差があります。

当院では、2000年以降、解剖学的基礎研究に基づいて手術方法を改良し(従来の方法B群、改良法C群)、手術後3カ月後には80.0%、12カ月後には98.3%に完全尿禁制が得られています。
また、2006年以降、短期尿禁性のさらなる改善を目指し、退院時には68.5%の完全尿禁性が得られています。

泌尿器科TOPへ戻る