泌尿器科 / 膀胱がん

膀胱がんとは?

 膀胱がんは、膀胱内腔の尿と接する膀胱粘膜にできる悪性腫瘍です。
 膀胱がんは、一般に無症候性血尿(他に症状を伴わない肉眼的血尿)をきっかけに発見されることが多いです。この血尿はしばしば一過性があり、一度でも肉眼的血尿があれば、数日以内に血尿が消失しても、すぐに専門医の診断を受けるべきです。また、排尿時痛や頻尿などの膀胱刺激症状で発見される場合もあります。

 膀胱がんは膀胱鏡検査により比較的容易に診断されますが、臨床病期や異型度などにより、さまざまな病状があり、治療方法も多彩です。そのため、正確な診断に基づき、患者さんに最も適した治療方針を決定することが大切です。

治療方針の決定

 膀胱がんはその病変の程度によって、大きく分けて筋層非浸潤性腫瘍(表在性腫瘍:Tis、Ta、Ti)、筋層浸潤性腫瘍(T2、3、4)に分類されます。それとともに、リンパ節転移や遠隔転移の有無を、CTやMRIなどの画像診断により、できるだけ正確に評価し治療方針が決定されます。

具体的な治療内容

(1)筋層非浸潤性腫瘍

 一般に、内視鏡手術によって95%以上の腫瘍は根治できます。しかし、この疾患は比較的再発率が高く、再発を繰り返すうちに浸潤性の膀胱がんに進展することがあるため、注意が必要です。また、異型度(悪性度)の高い一部の腫瘍に対しては、BCGの膀胱内注入などの補助療法を追加することがあります。

(2)筋層浸潤腫瘍

 膀胱全摘術が基本的な治療方針ですが、化学療法や放射線治療を併用する場合があります。膀胱摘除が余儀なくされた場合、何らかの形で尿を体外へ導くための手術(尿路変向術)が必要になります。

(3)尿路変向術

 当院では、腹壁にストーマを作成して尿を体外に導く方法(尿管皮膚瘻術、回腸導管増設術)、または尿道からの自然排尿が可能な膀胱再建術(新膀胱)のいずれかを、患者さんの病状に合わせて行います。後者は、1986年に国内で初めて当院で実施し、その後も多数の症例を経験しています。この方法により、ストーマや集尿器が不要になり、手術後の生活の質(QOL)が著しく向上します。

当院における患者数

 2022年・2023年の膀胱がん患者のうち、主たる治療が内視鏡手術(経尿道的腫瘍切除術)であるものが、それぞれ161例・132例、膀胱全摘除術が5例・1例でした。

【参考】当院で行っている膀胱再建術(新膀胱)の概要
当院で行っている膀胱再建術(新膀胱)の概要

浸潤性膀胱がんに対する膀胱全摘の治療実績

 当院当科では浸潤性膀胱がんに対する膀胱全摘除術は1995年7月から2023年12月の間に273症例に行われました。なお、この手術の適応疾患は、膀胱がんが筋層に及ぶもの、あるいはGrade3の膀胱がんで、多発性広範囲に存在し、かつ粘膜固有層に浸潤傾向を示すものです。

 膀胱周囲脂肪組織や周囲臓器に浸潤しているなどのhigh stage症例を含め、他施設での成績に比し、優れていると考えています。(1995年から2013年のすべての膀胱全摘除術220症例の疾患特異5年生存率は73.3%) また、尿路変向として新膀胱が施行された症例が186例と最も多く、新膀胱施行例の疾患特異5年生存率は83.2%でした(1987年から2017年の152例に対する統計資料)。
新膀胱施行例での術後成績が良好な傾向にあります。

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