泌尿器科 / ロボット支援腹腔鏡下手術

da Vinci Surgical System
写真提供:インテュイティブサージカル合同会社

da Vinci Surgical System ロボット支援手術を導入しました

 当院では2015年よりロボット支援手術システム「da Vinci Surgical System(ダ・ヴィンチ・サージカルシステム、ダ・ヴィンチ外科手術システム)」を導入していましたが、2024年より新機種の「da Vinci Xi」に更新しました。これは米国インテュイティヴ・サージカル社が開発したマスタースレイブ型内視鏡下手術用の医療用ロボットです。このシステムによるロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘除術(RARP)を2015年11月から2024年3月までに399例を行い、ロボット支援腹腔鏡下腎部分切除術は2017年12月から2024年3月までに78例を行っています。

 当院泌尿器科では、早くから前立腺がんに対して開放手術である根治的前立腺全摘除術を数多く行ってきました。また、他の病院に先駆けてロボット支援手術で採用している順行性の術式を行ってきました。この結果、男性機能保持や尿失禁防止などの術後合併症の低減において良好な成績を上げてまいりました。

 低侵襲手術の時代に入り、腹腔鏡手術やロボット支援手術で行える疾患に対しては、大多数がこの低侵襲手術を行うようになってきています。多くの疾患術式でロボット支援腹腔鏡下手術が保険適応となる現況で、当院では上記の前立腺がんに対する前立腺全摘除術と腎がんに対する腎部分切除術を行ってまいりました。さらに、2024年からは腎がんに対する腎摘除術および腎盂尿管がんに対する腎尿管全摘除術にもロボット支援腹腔鏡下手術を導入します。他の副腎腫瘍などに対する腹腔鏡下手術も引き続き行ってまいります。

 当院では、これまでの開放手術での豊富な経験を活かし、ロボット支援手術に取り組んでいます。当院当科の伝統に恥じない診療を提供し続けていくことに、決意を新たにしております。今後も適応のある疾患に対してロボット支援手術も導入していく予定です。

ロボット手術とは?

 前立腺がんに対する根治手術に関しては、現在、日本国内ではロボット支援手術が主流となっています。2023年初時点で、約7,500台のda Vinci Surgical Systemが全世界の病院に設置されています。日本でも570台以上のda Vinci Surgical Systemが導入されており、導入数は世界第2位です。この機器は、元々1990年代にアメリカ陸軍が軍用として開発を依頼したもので、遠隔操作で戦場の負傷者に必要な手術を行うことを目的としていました。その後、民間での開発が進み、1999年に完成。2000年7月にアメリカ食品医薬品局(FDA)より承認されました。

 日本では2000年3月に慶應義塾大学病院にアジアで初めて導入され、その後、2009年に厚生労働省薬事・食品衛生審議会で国内の製造販売が承認されました。2012年4月1日より前立腺がんの全摘手術のみ保険適用となりました。

 ロボットといっても、ロボット自体が自発的に操作をするわけではありません。術者がダ・ヴィンチを介して手術を行い、より鮮明な画像でより緻密な手術が行える特徴を有しています。

 da Vinci surgical systemは、surgeon consoleと呼ばれる操作部、patient consoleと呼ばれる腹腔内観察用3Dカメラと手術用鉗子の装置一式、助手と看護師のためのモニターとコンピュータ制御システムが収納されたvision cartの3つの部分から構成されます。

 前立腺がん手術では、腹部に5ないし6か所の穴を開け、そこから3Dカメラと手術用鉗子を挿入し、surgeon consoleに座った術者が3D画像を見ながら手術を行います。

 全世界でここまで普及した理由は、安全性のみならず、ダ・ヴィンチによるロボット手術が出血量を極力抑え、輸血の必要性を大幅に減少させ、術後の疼痛を軽減し、機能温存の向上や合併症リスクを大幅に回避できるなど、さまざまなメリットが評価されているからです。

前立腺がんの手術適応

 前立腺がんの手術は、あくまで限局性前立腺がん(早期がん)の根治を目的としています。
前立腺がんの手術適応は次の通りですが、その他のさまざまな条件によって実際の治療が決定されます。

  • 限局性前立腺がん(転移なし)
  • 75歳以下が一応基準
  • 全身麻酔に耐えられる全身状態
  • 下腹部の手術既往とその程度(無いか、あっても軽度)
  • 現在では、手術可能な患者さんには ほぼ全例でロボット支援腹腔鏡下手術を行っています。

腎がんの手術適応

部分切除術
  • 径4センチ以下の小径腎がん
  • 径4-7センチの腎がんの内外方突出の著明なもの
  • 全身麻酔に耐えられる全身状態
腎摘除術

 上記以外の腎がんで下大静脈・腎静脈に腫瘍栓が入り込んでいる症例の一部では、心臓血管外科のアシストのある施設に紹介しています。

 また、転移のあるケースでも腎摘除術が可能であれば行いますが、周囲への進展が強く、転移巣が多臓器で進行している場合は、薬物療法を行い、その後有効な症例に手術を行う方針となることがあります。
その場合、がんの取り扱いが極めて多い特別な施設に依頼することがあります。

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