がん診療センター / がんゲノム診療科
がんゲノム診療科、がんゲノム外来について
はじめに
がんに関連する遺伝子を調べて診断や治療に役立てることを『がんゲノム医療』と呼んでいます。当院では2023年4月より、この『がんゲノム医療』を担当するがんゲノム診療科、がんゲノム外来を開設し、医師、看護師および認定遺伝カウンセラーによる診察をおこなっています。がんゲノム外来では、①遺伝性腫瘍症候群の診断を目的とした遺伝カウンセリングと遺伝学的検査、②がん組織における遺伝子変異を調べるがん遺伝子パネル検査が実施できます。
① 遺伝性腫瘍症候群の診断を目的とした遺伝学的検査について
がんのおよそ5-10%に遺伝素因が関わっており、それらを『遺伝性腫瘍』と呼んでいます。「家系内に複数のがん罹患者がいる」、「複数のがんの既往がある」、「若年発症である」などの場合、遺伝性腫瘍の可能性が高くなります。がんゲノム外来では、遺伝学的検査の実施だけでなく、遺伝子や染色体(ゲノム)の変化によって起きる病気や体質をもつ可能性がある患者さん、あるいはその体質が判明した患者さんやそのご家族に、認定遺伝カウンセラーを含む専任のスタッフが検査の利点・欠点を含めた情報提供、患者さんやご家族の不安や疑問を解消するためのカウンセリングを行います。遺伝学的検査により遺伝性腫瘍が判明した場合、その情報を有効にがん治療とその後の健康管理に活用していただくため、各診療科の担当医師との連携や計画的ながん検診(サーベイランス)や予防的治療について提案しています。
② がん遺伝子パネル検査について
がん遺伝子パネル検査では、がん患者さんのがん組織や血液からDNAなどを取り出し、がんの発生に関わる多数の「がん関連遺伝子」の変異の有無を一度に調べます。現在は標準治療終了後の再発・転移がんの方に対し保険診療で行うことができます。近年、遺伝子変異によってできた異常なタンパク質(分子)を標的とする分子標的薬の開発が進み、がんの遺伝子変異の違いによって患者さん一人ひとりに合わせた薬剤の選択する考え方が普及しました。がん遺伝子パネル検査の結果は、がんゲノム医療の専門家の集まり(エキスパートパネル)でひとつひとつ検討され、効果が期待できる薬や参加できる臨床試験がないかを調べていきます。
がんゲノム外来 医師・スタッフ紹介
- 医師
- 藤本康二(消化器外科部長)、結縁幸子(乳腺科医長)、田中康博(血液内科医長)
- 認定遺伝カウンセラー(非常勤)
- 佐藤智佳、島田咲、春山瑳依子
- 看護師
- 高岡貴子(乳がん看護認定看護師、がんゲノム医療コーディネーター)
- 事務員
- 趙明華
- 医事室
- 千田洋、伊東秀晃、藤尾凜
診察日
毎週火曜日(AM・PM) | ・遺伝カウンセリング ・遺伝学的検査 (BRCA, 他) ・がん遺伝子パネル検査 |
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毎週金曜日(AM) | ・がん遺伝子パネル検査 ・遺伝学的検査 (BRCA, 他) |
場所
病院2階 ①番内科受付 がんゲノム外来
診療内容
1.BRCA遺伝学的検査
遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC:Hereditary Breast and Ovarian Cancer Syndrome)の原因遺伝子であるBRCA1,BRCA2遺伝子の病的バリアントの有無を採血により検査します。
BRCA遺伝学的検査の保険適応:
- 乳がんに罹患された方で、以下のいずれかに当てはまる方
- 45歳以下で乳がんと診断された方
- 60際以下で、トリプルネガティブ乳がんと診断された方
- 2 個以上の乳がんを診断された方
- 第3度の血縁者以内に乳がん、卵巣がん、膵がんと診断された方が1人以上いる
- ご自身が男性で乳がんと診断された - ご自身が卵巣がん、卵管がん、または腹膜がんと診断された方
- コンパニオン診断(PRAP阻害薬:オラパリブ 商品名:リムパーザの適応があるかどうか調べる検査)の適格基準を満たす、乳がん、卵巣がん、前立腺がん、膵臓がんの方
費用:
保険適応ありの場合 | 3割負担の方で約65,000円(遺伝カウンセリング・診察料・検査料込み) ※高額療養費制度の対象になります |
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保険適応なしの場合(自費) | ① BRCA1/2の病的バリアント保持者の血縁者の場合は、約50,000円(遺伝カウンセリング・診察料・検査料込み)
② ①以外の場合は、約18万円 (遺伝カウンセリング・診察料・検査料込み) |
BRCA遺伝学的検査の流れ:
【患者さまへ】
- BRCA1/2遺伝学的検査を希望される患者さんは、まず主治医の先生とご相談ください。主治医ががんゲノム外来の受診予約を行います。
- 検査を希望される患者さんは予約日にがんゲノム外来を受診してください。
可能であれば、ご家族と一緒に来院してください。(お一人で受診されても問題ありません) - ゲノム外来の医師と遺伝カウンセラーから、BRCA1/2遺伝学的検査ついて説明させていただき、検査に同意された方は、当日、採血検査を受けていただけます。検査するかどうかをもう少し考えたい方は、再診予約をとり対応させていただきます。
- 検査結果が出るまでに約3週間かかります。次回の診察にて、結果を説明させていただきます。可能であれば、ご家族と一緒に来院してください。(お一人で受診されても問題ありません)
【地域の先生方へ】
診療情報提供書を当院の地域連携室にお送りください。がんゲノム診療科にて頂いた紹介状を元にがんゲノム外来の予約を調整し、ご連絡いたします。
2.その他の遺伝学的検査
遺伝性腫瘍の原因遺伝子を調べる以下の検査も実施しています。いずれも遺伝カウンセリングを受けて頂いた後に採血で調べます。殆どの場合、保険診療の適用はありません(下記費用は検査料のみの記載です)。受診方法や検査の流れはBRCA1/2遺伝学的検査と同様です。
- 多遺伝子パネル検査(MGPT):
- 一度に多数の遺伝性腫瘍関連遺伝子の診断を行います。
(費用)約22万円 - TP53スクリーニング:
- リ・フラウメニ症候群(肉腫、乳がん、脳腫瘍 など)
(費用)約9万円 - MMRスクリーニング:
- リンチ症候群(大腸がん、子宮体がん など)
(費用)約12万円 - APCスクリーニング:
- 家族性大腸ポリポーシス(大腸がん など)
(費用)約9万円 - MEN1スクリーニング:
- 多発性内分泌腫瘍症1型(下垂体腫瘍、副甲状腺機能亢進症、膵・消化管内分泌腫瘍 など)
(費用)約5万円 - PTENスクリーニング:
- (乳がん、子宮体がん、甲状腺がん など)
(費用)約9万円
3.がん遺伝子パネル検査
2023年1月より当院はがんゲノム医療連携病院に指定されました。2023年4月より当院でもがん遺伝子パネル検査が提出できるようになり、京都大学医学部附属病院(がんゲノム医療中隔拠点病院)と協力して診療しております。
がん遺伝子パネル検査の適応:
保険収載されているがん遺伝子パネル検査が実施できる方は
- 標準治療の抗癌剤治療が効かなくってきたがん患者さん
- 標準治療がない稀ながん(希少がん)あるいは原発不明がんの患者さん
- 全身状態が良好(PSが0または1)、3ヶ月以上の予後が見込まれる患者さん
- 費用と結果について納得頂いている患者さん
費用:保険適応あり。
1回目(検査時) | 3割負担の方で約150,000円 |
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2回目(結果説明時) | 3割負担の方で約40,000円 |
がん遺伝子パネル検査の診療の流れ:
- がん遺伝子パネル検査を希望される患者さんはまず主治医の先生と検査の必要性や検査の希望をよく相談してください。
- 主治医の先生は紹介状や血液や画像などの検査結果、病理組織所見などをがんゲノム診療科に送ってください。
- 当科で頂いた紹介状や検査結果を元にがん遺伝子パネル検査の適応を判断し、がんゲノム外来の予約を取ります。
- 検査を希望される患者さんは予約日にがんゲノム外来を受診してください。
できるだけご家族の方と一緒に来院してください。 - 再度がんゲノム外来の医師から、がん遺伝子パネル検査について説明させていただき書面で同意をいただきます。患者さんやご家族が、検査するかどうかをもう少し考えたいというご希望の場合は、後日に同意書をいただくこともあります。
- 約1ヶ月半後に検査結果が当科に返却されます。電話などでがんゲノム外来受診日を相談させて頂き、結果をご説明します。
結果の説明の際にもできるだけご家族の方と一緒に来院してください。
地域の先生方へのお願い
当科へご紹介いただく際には、まず事前に紹介状やこれまでの検査結果などの資料を当院の地域連携室へお送りください。がんゲノム診療科で資料を確認させて頂いた後に地域医療室を通じて受診予約を取らせていただきます。紹介状なしでのご紹介、あるいは予約外の診療はお断りしています。ご注意下さい。