消化器外科 / 虫垂炎について
虫垂炎について
虫垂炎とは何らかの原因で虫垂に感染が起こった状態をいいます。虫垂は大腸の一部で、大腸はお腹の右下から始まってお腹を一周して肛門につながっていきます。その始まりの部分を盲腸と呼び、その盲腸からしっぽのように出ている部分を虫垂といいます。虫垂炎のことを一般に「盲腸」と呼びますが、実際に炎症がおこっているのは盲腸ではなくそのさらに奥にある「虫垂」ということになります。
症状としては腹痛が起こります。最初はむかつきやみぞおちの痛みが起こるため、胃炎と勘違いされることもありますが、時間経過とともにお腹の右下が痛くなってきます。さらに放っておくと炎症がひどくなり虫垂が破れてお腹全体に感染が広がり、強い腹痛・高熱・血圧低下を起こすこともあります。
若年者に多い疾患ですが、全年齢層で見られます。ただし子供の虫垂炎は短時間に病状が悪化してしまうことがあるので注意が必要です。
虫垂炎の治療
治療は大きく2通りあります。どちらの治療方がよいかは虫垂炎の重症度や患者さんの希望・社会的背景などを考慮して決定しています。
①内科的治療
抗生物質での治療を行います。ただし治りきらない場合は手術が必要になります。また治癒後に再発することがあります。
②手術治療
手術をして虫垂を切除することが根本的な治療になります。糞石(硬くなった便)が虫垂に詰まっていて薬では治りにくい場合、虫垂が破れそう、あるいはすでに破れて腹膜炎となっている場合は手術をお勧めしています。
虫垂炎が発症して長時間経過し虫垂が壊死してしまい、膿が貯まって周囲の臓器と一塊となってしまっているような場合は、すぐに手術をせずに内科的治療を選択することがあります。これはすぐに手術をするとまわりの腸が炎症で痛んでしまっているため広範囲腸切除が必要となってしまうことがあるからです。まず抗生物質で感染をコントロールしてからしばらく期間をおいて手術を行います(interval appendectomyといわれます)。
手術は全例腹腔鏡で行っています。お腹に3~4カ所小さな孔を開け、そこからカメラと操作用の鉗子と呼ばれる道具を挿入して手術を行います。炎症が軽度の場合は臍部1カ所の孔だけで手術を行う単孔式という手術を行います。
手術後は経過がよければ3~4日の入院になることが多いですが、術前の感染がひどい場合は抗生剤治療を追加で行うこともあります。