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睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは

 睡眠時無呼吸症候群(SAS:Sleep Apnea Syndrome)とは、睡眠中にときどき呼吸が止まる状態(無呼吸)になる病気です。
寝ている本人は気がつきませんが、周りの人に「いびきがうるさい」「息が止まっている」などと指摘された方は要注意です。
 一般的に、この病気が原因ですぐに重篤な状態にはなりません。しかし、無呼吸が続くと、体の中の酸素が足りない状態が続くことになり、これが全身に悪影響を及ぼします。
 最近では高血圧、心疾患、脳血管障害など全身の疾患を引き起こすが分かってきました。また、昼間の眠気や頭痛により日常生活や仕事への影響など、社会的な損失も問題になっています。

原因

 多くの場合、いびきなどで空気の通り道である「気道」が狭くなったり、塞がったりすることで起こります。これを閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS:obstructive sleep apnea syndrome)といいます。
一方で、数は少ないですが呼吸をつかさどる脳中枢の機能障害によっておこる場合があり、これを中枢型睡眠時無呼吸症候群(CSAS:central sleep apnea syndrome)といいます。OSASとCSASをあわせてSASと呼びます。

症状

 「いびきがうるさい」「昼間に眠い。集中力がない」「朝、すっきりと目覚めない」「朝起きた時に頭痛がある」「夜中によく目が覚める」「熟睡した感じがしない」などの症状がある方は、SASの可能性があります。

合併症

 睡眠中、呼吸が止まるために、体の中の酸素が不十分(低酸素血症)となります。反対に、不要な二酸化炭素は溜まってしまいます(高炭酸血症)。この低酸素血症や高炭酸血症が続くと、全身の臓器に悪影響を及ぼし病気が引き起こされます。
 代表的なものとして高血圧、不整脈、虚血性心疾患、脳卒中、高脂血症、糖尿病、食道胃逆流症、突然死などがあります。
 最近の研究では、SAS患者さんでは高血圧は2倍、虚血性心疾患は3倍、脳血管疾患は4倍、糖尿病は1.5倍発症する率が高いと報告されています。

<参考文献> Nieto FJ,Young TB,Lind BK.JAMA 2000; 283:1829-1836 Mooe T, Rabben T, Wiklund U.Chest 1996; 109:569-663 Bassetti C, Aldrich MS.Sleep 1999; 22:217-223 Punjabi NM, Shahar E, Redline S.Am J Epidemiol 2004; 160:521-530

診断方法と検査

まず、問診によりSASの可能性を評価します。
一般的には「ESS眠気テスト」という質問票を用いて、昼間の眠気を判断します。
問診やESSでSASの可能性が高いと判断されれば、次は簡易型SpO2モニターを用いて、実際に睡眠中に体の酸素濃度が低下するかどうかを調べます。この検査は、患者さんにこのモニターをご自宅に持ち帰っていただき、寝る前に御自分で装置を体に着けていただきます。
簡易型SpO2モニターで、睡眠中に酸素濃度が下がると判明した方は、さらに詳しい終夜睡眠ポリグラフ(PSG)を行い、睡眠中の状態を詳しく調べSASかどうかを診断します。この検査は一泊入院です。
PSGにより、SASの重症度も判明します。
SASはAHI(apnea-hypopnea index)といって、1時間当たりの無呼吸及び低呼吸の数によって、重症度を分類します。
AHI 15以下が「軽症」、15以上30以下が「中等症」、30以上が「重症」です。

治療

治療は重症度によって変わります。
軽症であれば減量、生活習慣の改善でも症状が改善する可能性があります。
AHIが20以上の場合CPAP療法(continuous positive airway pressure: 持続的気道陽圧法)や口腔内装置が必要です。
CPAP療法とは、マスクを用いて持続的に気道に空気を送り込み、睡眠中に気道が狭くなることを防ぐ治療です。鼻中隔弯曲症や扁桃肥大など、鼻やのどに問題がある場合耳鼻科の診察を受けていただいたりもします。

睡眠時無呼吸症候群(SAS)の治療を受けなければどうなるの?
厚生省研究班の調査によると、AHIが20以上の場合5年生存は84%(死亡率は16%)と報告されています。
また、最近の研究では、AHI30以上の重症例では、無治療で放置すると、約15%が死亡すると報告されています。
しかし、CPAP療法をすると、その死亡率が5%にまで低下し、健常人の死亡率とほぼ同じになるとの報告があります。

<参考文献> Marin JM, Carrizo SJ, Vicente E, Agusti AG. Lancet. 2005 Mar 19-25; 365:1046-53

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