外来化学療法センターの特徴

 がんの化学療法(がん薬物療法)の多くは、外来通院での治療が中心になってきています。外来化学療法の目的は、患者さんの社会活動を可能な限り損なうことなく、望ましい化学療法を継続することで治療効果を発揮させることにあります。新規抗がん剤の開発に伴うレジメンの改良によって外来化学療法の適応が広がり、また、抗がん剤に伴う吐き気や好中球減少による感染症対策などの支持療法が向上したことで、有害事象を軽減させ入院で行われている治療と同等の十分な効果を維持することが可能となりました。

 当院では2007年8月に12床(ベッド5床、リクライニングチェア7床)の外来化学療法センターが開設されました。がん薬物療法専門医医師1人(専従)、がん化学療法看護認定看護師2人(専従)、専任看護師4人、がん薬物療法認定薬剤師1人と薬剤師4人のうち1人が常置し、各科の患者さんを一元化して受け付け、プロトコールの事前登録制と投与計画書に基づいた無菌調剤による化学療法を実践しています。患者さんにとって「快適、安心、便利」な診療を提供していけるよう各医療職間での情報の共有と十分なコミュニケーションに基づいたチーム医療を展開しています。

代表的な疾患

乳がん、呼吸器腫瘍(肺がん、悪性中皮腫、胸腺腫瘍等)、消化器腫瘍(食道がん、胃がん、結腸・直腸がん、膵臓がん、胆道がん等)、泌尿器腫瘍(前立腺がん、膀胱がん、腎盂・尿管がん、腎臓がん、尿膜管がん等)、血液疾患(悪性リンパ腫、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、白血病等)、神経内分泌腫瘍および原発不明がん等の腫瘍全般が外来での全身化学療法の対象となります。

また、膠原病・関節リウマチやクローン病・潰瘍性大腸炎等に対する生物学的製剤による治療も外来化学療法センターに移行し、安全性の向上に努めています。

所属医師のご紹介

草間 俊行 部長
山梨医科大学 平成2年卒業
取得資格
(専門医・認定医等)
  • がん薬物療法専門医
  • 日本臨床腫瘍学会指導医
  • 日本消化器病学会専門医
  • 日本外科学会認定登録医
所属学会
  • 日本臨床腫瘍学会
  • 日本消化器病学会
  • 日本外科学会

診療実績

2007年8月開設時より外来化学療法センターを利用した患者総数は4,100人を超え、2023年度は約600人が外来での全身化学療法の対象となりました。
外来化学療法の件数は年々増加し、2023年度の総件数は5,049件で、1ヶ月の平均件数は約420(381〜463)件でした(図1)。

図1 過去9年間の外来化学療法総件数の推移

疾患別で多いのは乳がん、非小細胞肺がん、大腸がん、膵臓・胆道がん、悪性リンパ腫などの患者さんです(図2)。

図2 診療科別利用率および原発臓器の内訳

当センターでは新規抗がん剤の早期からの導入や、血管新生阻害剤や分子標的治療薬、免疫チェックポイント阻害剤を用いたレジメンにも、積極的に取り組んでいます。

各種対応・連携サポートについて

 外来化学療法を安全に行うためには、化学療法施行中に発生した有害事象に対する迅速な対応のみならず、帰宅後あるいは経過中の緊急時対応が重要であることは言うまでもありません。当院では、経過中に状態変化を自覚した時には、当センターに直接連絡していただき対応できるシステムをとっています。
 また、夜間休日緊急時の救急センターでの対応、さらに重篤な有害事象やoncologic emergenciesに対しては、循環器センター・呼吸器センター・消化器センター等の各専門領域との迅速な連携が可能となっており、当院の特性を生かしたチーム医療としての外来化学療法の充実と患者サポートの向上に努めています。

外来化学療法センターの診療実績については、下記のPDFファイルをご覧ください。