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意外に多い、巻き爪の悩み

日本人の10人に1人は「巻き爪」に悩まされていると言われています。巻き爪とは爪が湾曲し、皮膚に食い込んでいる状態のことで、主に足の親指の爪に見られます。巻き爪部分が皮膚に食い込んで痛みや炎症を起こした状態のことを陥入爪(かんにゅうそう)と言います。陥入爪になると、歩行できない程の痛みを伴うこともあり、悪化する前に適切な処置が必要です。

陥入爪の症状

痛み

ほとんどの巻き爪は足の親指に生じます。陥入爪の初期は指先の先端の炎症で、痛み、赤みが見られます。
指先は敏感で、歩行のたびに体重がかかり強い痛みを生じることがあります。

血液内科スタッフ

指先の腫れ・肉芽腫(にくげしゅ)

炎症が生じると浮腫(腫れ)によりさらに爪の食い込みが強くなり、ますます炎症がひどくなります。
浮腫→食い込み →炎症の悪循環で、爪の横の皮膚に炎症性の肉芽腫(赤いお肉)を形成し、さらに痛みが強くなります。

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化膿

もっと重症になると炎症が進み、指先が化膿(ばい菌が入ること)します。
陥入部の周囲の皮膚の発赤、腫れ、膿の貯留などが見られ、激痛を伴います。
ひどい場合、足の指先に体重をのせることができなくなり靴も履けず、踵で歩くような状態にまでなることもあります。

巻き爪の原因:そのまま予防につながります。

深爪

一番の原因は深爪です。
「靴がきつかった」、「坂道などをたくさん歩いた」、「スポーツをした」、「ぶつけた」などのちょっとしたきっかけで、爪先端の食い込みに痛みを生じ、
つい深爪をすることがきっかけになることが、最も多い原因です。
まずは爪の先端が皮膚から出ている状態まで伸ばし、形を「スクエア」に整えることが大切。

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足に合わない靴

硬い革靴、先端のきつい靴、逆に大きすぎる靴などで足の指先が圧迫されつづけると、巻爪になりやすく、治りにくくなります。巻き爪の治療中はもちろん、治療後も正しい靴の選び方をしなければなりません。

外反母趾

ヒールやパンプスなどの先が細い靴を履いて歩行し続けた人は外反母趾になりやすく、普通の靴を合わせるのがますます困難になります。

爪のダメージを伴う外傷

けがで爪が損傷されたり、爪が抜けてしまったりしたことがきっかけで巻き爪になることがあります。

爪みずむし

爪白癬にかかると、爪が厚くなり変形が生じます。それが原因で巻き爪になることがあります。この場合、爪白癬の治療が不可欠です。

下半身麻痺

下半身麻痺で歩行しなくなり、地面から趾先への押し返しがなくなると爪が巻くことがあります。麻痺で運動ができなくても、知覚が残っていると激痛となります。
逆に知覚が残っていない場合、炎症が進行しても痛みを自覚することがないので、重症化しやすくなります。

その他

特に原因がないのに、発症することもあります。

軽度の巻き爪の治療法

テーピング法

くい込んで痛い側の爪に弾性絆創膏(伸縮するテープ)を貼り付けます。
次に、矢印の方向へ弾性絆創膏を引っぱりながら、らせん状に足の指に巻き付け固定します。
この処置で痛みは楽になり、爪を十分に伸ばすことができます。

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アクリル人工爪

切り過ぎて陥入した爪の角をアクリル樹脂でカバーして、深爪する前の長さになるよういわば「爪を継ぎ足す」処置です。

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内服薬・外用薬

細菌感染を伴う場合、抗菌薬の内服と外用、肉芽腫の状態によりステロイド外用を併用します。投薬期間はおおむね2週間程度。
靴での患部の圧迫を極力回避し、運動や長時間の歩行を避けること、感染予防のため患部をよく洗うことも必要です。

重度の巻き爪の治療法

巻き爪の程度や状況、患者さんの希望により、最適な治療を選択します。

矯正

①マチワイヤー:
湾曲した爪にワイヤーを固定し、爪の形を平らにする。
形状記憶合金を爪に装着し、アロンアルファなどの瞬間接着剤で爪に固定します。

血液内科スタッフ

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②コレクティオワイヤー:
爪の両側縁にフック型のワイヤーを引っかけて巻き上げる矯正法です。

①、②のいずれもワイヤー自体が高価で保険の適応がないので、費用は病院によって違います。

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ワイヤーを装着すると爪の根元もこれによって影響を受け、矯正される可能性があります。また続けて行うことで爪甲が広がり徐々に平らになります。短ければ2~3ヶ月ごとに再処置が必要ですが、逆に可逆性なので、取り返しがつくともいえます。

フェノール法

腐食性の液体であるフェノールを使用して 爪を作る組織である爪母(そうぼ)を薬品で部分的に破壊する治療。
陥入部を部分抜爪した後綿花で薬液を爪母につけます。ほとんどの場合外来で局所麻酔下に施行し、痛みも少なく、治療翌日から入浴、シャワーも可能です。治療がうまくいけば巻き爪は完治しますが、フェノールで破壊する爪母の範囲をコントロールすることが難しいため、爪が再生したり、逆に残した正常な爪が変形を来したりする可能性があります。

正しい靴選びのポイント

どんなにお金と時間をかけて根本的に治療をしても、以後の予防を怠れば再発します。

  • まず足のサイズ(たて・よこ・たかさ)を計測する。小さすぎず大き過ぎないものを選ぶ。
    つま先の、趾が開けるくらいゆとりのあるものにする。
  • 自分の足型や「土踏まず」がきちんとフィットしていることを確認する。
  • 靴底は衝撃吸収素材で、厚めのもの。実際に履いて試して重過ぎたり軽過ぎたりしないものにする。
  • ヒールが3㎝以上の高いものは避ける。
    ハイヒールはデートやパーティーなど、時間とシチュエーションを限定し、履いている時間を短くすることが大切です。
  • 足をしっかり固定できる「紐靴」タイプがオススメです

靴のサイズが小さすぎるのは論外ですが、大き過ぎても、足が前後左右に動いてかえって爪を痛める原因になります。つま先の余裕は5~10mmが理想。
靴を履く時に履く靴下の生地が、薄手の場合と厚手の場合では、1㎝近くサイズが変わることもあります。靴下や中敷きの組み合わせなど色んなパターンを試してみるのが重要。本来、靴は足の保護を目的とするものですが、ハイヒールなどのファッション性を追求した靴は、足の保護や歩くためといった、靴本来の目的には合致していません。
また、紐靴の場合、面倒でも履く度に毎回しっかりとかかとを合わせ、靴ひもをしっかりと結んで足の甲で固定するのがポイントです。すぐに履けるということは、それだけ足が安定しない靴だということ。紐が緩いと大きな靴と同様、靴の中で足が動いてしまうので、爪先に衝撃を与えます。
靴を選ぶときは必ず、左右両方の靴を履き、少し歩いたりするなどして、時間をかけて慎重に選びましょう。やわらかすぎる靴は履きやすいように感じるかもしれませんが、足や体重をしっかりと支えることができず、地面からの衝撃が吸収できずにかえって足や腰、関節などに負担をかけます。特にかかとがしっかりした靴を選びましょう。

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